運動会の季節ですね。
大怪我などの事故が多発している組体操ですが、今も運動会で組体操をしているところは多いようです。
そもそも、どうして運動会では当たり前のように組体操をすることになっているんでしょうか?
堀越英美さんの「不道徳お母さん講座」という本に組体操の歴史などについて書かれていました。
「組体操の元ネタは兵式体操の人間はしご」(引用)
以下、堀越英美さんの「不道徳お母さん講座」より引用します
明治中期により全国の小学校に運動会が普及するようになる。
そのきっかけは、小学校に軍隊の規律と秩序をもたらすべく導入した「兵式体操」である。(中略)運動会のきっかけとなった兵式体操とはどのようなものか。
「兵式体操教範」(明治40年)を眺めていたら「人梯(じんてい)」という組体操の人間ピラミッドのような体操を見つけることができた。
これは戦場で高い壁などを乗り越えて進軍するための訓練らしいことが、図2からわかる。
この後、「(図2)人梯図2」で
軍服を着た人たちが戦場らしき場所で人梯を作っている図が示されているのだけれど、これが本当に、運動会でする組体操の人間ピラミッドそのもので、ぞっとしました。
私は、歴史を知らないで全員強制参加の運動会でこれをしていたんだなー。
そして、数年後には小学校に上がった自分の子供がこれをしなくちゃいけないのかもしれない。
運動会の組体操は、自ら希望して入った組体操部の部活で、毎日トレーニングを重ねた人がするわけではない。
体が強い子も弱い子も、やる気がある子もない子も、全員強制参加。
全員が怪我などのリスクあり。
骨折などの怪我を負った本人やその家族が辛いのはもちろん。
体がぶつかったりして他の子を怪我させてしまうこともある。
それで直接責められることはあまりないだろうけど、自分の体がぶつかったせいで他の子が怪我したらショックだろうし「自分のせいで…。」なんて自責の気持ちを持つかもしれない。
学校が強制することで、子供たちを被害者だけでなく、加害者にもしてしまう可能性がある。
リスクが大きすぎる。
私が小学生の頃も組体操は全員強制参加なので、しないという選択肢も発想もなく、我慢してやっていました。
でもこれって何のための我慢なんでしょう?
ここまでリスクの大きいことを運動会でする必要があるんでしょうか?
危険なのだから禁止にすれば?
以下、「不道徳お母さん講座」より引用します。
先生は「辞めたくても保護者ウケを考えるとやめられない」と言い、
保護者は「組体操をやめさせたいが学校が取り合ってくれない」と愚痴る。
経験者はもちろん「つらかった」と語る。
いくつかの自治体では、すでに組体操は禁止され、怪我人が減少するなど事態は少し改善しているようではありますが、それでもやはり、組体操が継続されているところも多いようです。
生徒自身や保護者の一人が声を上げて学校に止めるようにお願いするのはとてもエネルギーのいることです。
やはり自治体などトップにいる人が決断し、各学校に通達することで被害者を減らすことができるはずです。
(強制参加での事故なので、もはや「被害者」だと思います。)
組体操の事故件数
平成26年度までは、組体操の事故は年間8000件以上。多いです。
参考文献:▶︎組体操等による事故の状況(PDF)
上の「組体操等による事故の状況」の分析資料、かなり内容が濃いです。
「タワー・ピラミッドで被災した児童生徒がいた位置」の分析もされています。
事故が相次ぎ、安全のためタワーやピラミッドの段数に制限がかかったところも多いようですが、3段以下のタワー、5段以下のピラミッドでもかなり多い事故が起こっていることがわかります。
被災児童がいた段もデータがあって、最下段、中段、最上段、どの段でも多くの事故が起こっています。
小学生の登下校中の交通事故も多いと聞いていたので、その件数を調べてみました。
参考文献: 警察庁交通局▶︎「児童・生徒の交通事故」(PDF)
「1-2-3 小学生歩行中の通行目的別死傷者数」
平成25年から平成29年の5年間の小学生の登下校中の交通事故の件数が9,623件。
1年間ではなく、5年間の合計です。
年間8000件の組体操の事故がいかに多いか、リスクが高いかがわかると思います。
義務教育の学校で、こんなにリスクの高いことを子供がしなければならないなんて…。
以下再び「不道徳お母さん講座」より引用です。
今も運動会で軍隊のような行進を訓練させられるのも、スポーツ技能を競うより見世物の要素が強いのも、個人競技より団体競技がメインなのも当時の名残だろう。
小学校運動会はその起源からして、学校が子供達に従順さと団結心を仕込んだことを偉い人に披露するためのイベントだったのだ。
運動会の行進もそういうもんだと思ってやってましたが、あれって、日本以外の人とかから見たら、かなり異常な光景に見えるみたいですね。
自分自身も「なんだかいやだなー。でも運動会とはこういうものだ。これが普通だから仕方ない。」って感じでしたが、改めて文章で運動会の歴史を知ると、なんとも言えない気持ちになりました。