佐藤いつ子さんの「透明なルール」というティーン向けの本を読みました。
この本に出てくるキーワードは「ブラック校則」「同調圧力」「ギフテッド」「HSC」
佐藤いつ子さんの以前の著書「駅伝ランナー」は50以上の全国中学校入試や学参問題に採用されたそうです。
今回読んだ「透明なルール」は2024年の4月に出版されたばかりで、今年2025年の中学入試に出題されるのではないかと噂されています。
表紙のイラストや文字の雰囲気も私は好きです。
中学校生活を舞台にしたお話で、特に女子特有のグループで群れたりする年代の微妙な心の動きが書かれています。不思議な転校生の存在で、主人公が同調圧力のようなものにより違和感を感じ、行動にうつしていく姿が書かれています。
クラスの中で目立つ子が発言権を持っていてそれに対して空気を読んで周りの人はあまり意見を言わないようにするシーンもありました。
偉そうに怒鳴り散らしている中学校の先生も出てきて、こういうってあるよな〜こういう雰囲気の先生いて嫌だったな〜とかも思い出しました。
特に中学校ぐらいの時は、クラスや部活の人間関係が全て、と思ってしまうようなところもあり、なんかしんどかったのを思い出しました。
ですが、主人公が、少しずつ自分らしく行動する姿や人間関係を築いていく姿が書かれていて、読み終えた後は気分が良いです。
メイン想定読者はティーンだと思いますが、大人の私が、読んでよかったなと思える本でした。
ギフテッドかつHSCの子も出てくるのですが、生きづらさなどもうまく書かれていて、ストーリーはフィクションながらも人物設定がうまく、よく取材されているのだと思いました。
巻末の参考文献も、ギフテッド、ブラック校則、サイレント・マジョリティーなど気になるキーワードが並んでいて、読んでみたくなりました。
中学入試に出るかも、なんて言われているので、中学受験を控えた小学生を含む多くの人がこの本を読むでしょう。
そして、この本をきっかけにギフテッドのことを知って、心の片隅に置いておくだけでも実際にそういう人に会った時に、「あぁ、そういう人なんだな」と受け入れられるんではないかな、と思います。
別の本の話になりますが最近「成瀬は天下を取りにいく」という本を読みました。
(面白かったです。さすが、本屋大賞を受賞してるだけあります。小5の子供も面白いと言って家族でまわし読みしました。)
本の中ではギフテッドという言葉は使われていなかったと思いますが、主人公の成瀬は、一度見た名前は忘れない、絵も字もうまい(特に習ったわけでもない)、興味を持ったことをとことん追求する、問題を見ただけですぐ答えがわかって県内トップ高校から京大…というエピソードから成瀬はギフテッドだと、私は推測しています。
こちらは割とコミカルな感じの本で、小学生の頃に成瀬が学校で浮いていたエピソードも出てくるのですが、生きづらさとかよりは、ぶっとんだ独特のクセのある人気者キャラのような側面が強く書かれていました。
こんな風に本のキャラクターとして出てきたら「成瀬大好き!」ってなる。
でも実際に、特異な才能を持つ人が目の前にいたら、「ずるい」という感情が出てきたり、よくわからないから距離を置こうとするものなんだと思います。
そういうリアルなところが「透明なルール」には書かれていました。
グループの同調圧力のような息苦しさも表現されていましたが、「透明なルール」は魅力的な登場人物がたくさん出てくる素敵な本でした。
↓「成瀬は天下を取りにいく」もおもしろかったです。
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