中学受験をテーマにした朝比奈あすかさんの小説「翼の翼」を読みましたので、感想を書きます!
ざっくりとしたあらすじは、塾の無料テストをきっかけに、通塾・中学受験をすることになる息子の翼くんをお母さんメインで追っていく小説です。
塾の成績に一喜一憂、情緒不安定になったり、多分、全然中学受験に関係ない人からしたら、「なんで子供の成績のことでこんなことなってんの?」って感じだと思いますが…。
中学受験が身近な方は「二月の勝者」と同じく「翼の翼」も必読図書ですよ〜。
私、普段は実用書的な本を読むことが多くて、そんなに小説は読まないんですが、「翼の翼」はグングン引き込まれて一気に2日くらいで読み切りました。
まだ読んでいない人は、このブログを最後まで読んでから読んでも十分楽しめるとは思いますが、多少のネタバレは含みますので、事前情報なしに楽しみたい!って方は、先に読書をどうぞ!
「翼の翼」の見どころ
1:ブログとかリアル世界のあるある
小説自体はフィクションですが、出てくる塾や最難関中学、無料テストなどモデルになっているところがあるのは、明らかで「あ〜、はいはい、モデルは〇〇だな。」とか思いながら読むのが楽しいです。
小説の中に架空のブログが出てくるのですが、もう、本当にあるあるなんですよ。
ブログタイトルも文章の内容も書籍化する展開とかも…。
架空の掲示板も出てくるんですが、コメント書いてる人とかも、「うわー、こんなん書く人いそう!」って感じでなんだかニヤニヤしちゃいます。
そんで翼の母も、書かなくてもいいのに「私も決勝大会経験者です。」とか自己紹介してから励ましコメント書いたり(のちに、高度なマウントとか書かれてる。)もう絶対に作者の方、中学受験ブログも掲示板も見まくってたな…って感じで。
ちょっと取材してそれをもとに書いた、とかそんなんじゃない体験者のリアル感がすごいです。
作者の朝比奈あすかさん親子、中学受験体験者なのだそうです。
そうじゃないと、このリアル感は書けないと思う。
普通にママ友に気軽に話しきれない話題だからこそ、ネット掲示板にハマっていくんだろうなぁ。
小説に出てくる決勝大会まである「全国一斉テスト」、リアルでも違う名前でありますが、どれだけの親子がこのテストをきっかけに中学受験を始めたことか…。
2:島津っていく父
「二月の勝者」の島津くんの父、有名になりすぎて教育虐待=島津という言葉で置き換えられるくらいですが、きっとこれも中学受験ではよくあることなんでしょうね。
翼の父は最初は「そんなの塾の営業だ」とか冷ややかにみていたはずなのに、どんどん島津っていくんですよ。
小説は2年ごとに8歳、10歳、12歳と時間軸が飛んでいるので、少しずつ島津っていく経過はあまり書かれてないのですが、もう12歳だと完全な島津父の出来上がりです。
あー恐ろしい。父と息子はこうなりがちなのかな〜?
なんとなく、私はこの部分は一番フィクションらしく感じて、実際にはないんじゃないの〜?って気分で読んだけど、でもあるあるなのかも…。
教育虐待の負の連鎖も書かれています。
3:母の心理描写など
Photo by Sharon McCutcheon on Unsplash
あるあるネタでニヤニヤ、とかもありますが、やはり、この「翼の翼」のメインの見どころ(読みどころ)は、ちょっと優秀な子を持つ母の心理描写だと思います。
ママ友との会話では建前で言葉を選んで話して、心の中では本音…みたいな部分。
声を大にしては言えないような部分を言葉にしている、というのがすごいんだと思います。
ママ友とファミレスでおしゃべりとか、私はなんだかいいなぁって思ったし、子供が幼児だった頃のことを知ってくれているママ友とかもいて、翼の母は結構いい人間関係に恵まれていて、一番小説に涙ぐめる部分も、(夫とでも息子とでもなく)ママ友との会話でした。とても読んでいて心が痛いシーン。
多分、「翼の翼」を読む中学受験界に身を置く人たちも
「こんなんになってまで中学受験はしたくない」
って感想を持つと思います。
「自分はこうは、ならない。」とも。
でも、そうなのかな?
うちは小2の息子がいて、まさに「翼の翼」の最初の章の時期なんだけど、すぐに入塾とはなっていないにしても、少なくとも8歳の時の翼の母、すごくわかると思った。
私の息子が小1の秋に初めて受けた全国統一小学生テストの結果返却の時の様子が、これですよ。▼
「無料だし、受けてみよう!」とかって受けて、塾長さんになんか褒められて嬉しくなって、家帰って冬季講習のパンフレット、めっちゃ見てるから!笑
もう、こういうルートになるって決まってるんじゃない?って思ってしまう。
きっと塾に入ったら、やる気を出させるための塾のシステムとかが、どんどん親子をこういう感情にさせていくんだろうなぁ、追い詰められていくんだろうなぁって思います。
「自分はこうは、ならない。」
って思いながら読む本、でもなっちゃうんじゃないかな?っていう、うっすらした怖さがずっとつきまとう。
そんな本です。純粋に中学受験テーマで感動するだけの本ではないです。朝比奈あすかさん、本当に心理描写うまいと思います。
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